以前の記事でも描いたように、CLIP STUDIO PAINTではラスターもベクターも扱える。

CLIP STUDIO PAINTの使いそうな機能を把握

そこで、ラスターでばかり練習するのではなく、一度ベクターの方も触ってみることにする。

ベクターを扱うには「ベクターレイヤー」を作成すればいい。レイヤーパネルの上記の位置から追加できる。いざ。

描いてみた。一見、何も変わらないように見える。だが座標計算し線を生成するベクターデータであれば、いくら拡大しても荒くなることはない。拡大(ズーム)してみる。

荒いやんけ!!!!!!!!!!

荒いやんけ。おい。どういうことだ。ベクターじゃないのか?調べてみることにした。「操作ツール」の「オブジェクト」を使う。

ベクターじゃねえか!!!!!!!

パスがあるじゃねえか!!!!!なんでラスターのようにドットで扱われているように見える状態になっているんだよ。マニュアルでは 再計算するのでジャギーが発生しない と書いてたではないか。何が起こっている?調べてみる。

やはり通る道か…

わかったこと

公式の相談コミュニティのログを見ると、以下のように書かれていた。

ベクターレイヤーは、描画後の線を変形させたり、拡大・縮小しても画質に劣化が起きないという特性のものであり、描画した線の見た目自体はラスターレイヤーとほぼ変わりはございません。

試してみたところ、実際その通りでオブジェクトの拡大縮小(ズームではなく、オブジェクトそのものを大きくしたり、小さくしたり)はベクターらしく再計算され綺麗に描写されていた。用途別の解像度の違いがある時などに役立つものだ。ラスターの方は当然、拡大したら劣化した。こちらも当然だ。

こちらのログにあったのは以下のような回答。

Photoshopでもそうですが、主にラスタ画像を扱うソフトでは、不整合を防ぐために、ベクター画像も、この様に表示するのが一般的です。

ふむ。調べてみてもすぐに裏付け情報にたどり着けなかったので、証明はできないがそうなのかもしれない。

予想していた結果とは違ったが、ベクターの長所は確認できたので、結果オーライか。

真相は、「先入観」にあった

ここからいきなりデザインの話に入る。ペンタブの修行ブログなのに。前もって断っておくがこれは文句や批判ではない。デザイナーとして、起こった事象への興味しかない。

マニュアルでは 再計算するのでジャギーが発生しない と書いてたではないか。

先ほど、このように書いた。そして、このリンク先ではこのように語られている。

CLIP STUDIO PAINTではこれらに加えて「筆圧」の情報も記録しています。拡大しても線を再計算して描画するので「ジャギー」が発生しません。「ベクターレイヤー」ではこの形式で絵を保存しています。

こちらも、そして解説側も間違っていないというのが真相だ。認識の相違に問題がある。

焦点を当てるべきは「拡大・縮小」という言葉にある。この言葉は、可能性としては二つの捉え方が存在する。

  • 「ベクターのオブジェクトを」拡大縮小しても劣化(通称ジャギー)は発生しない
  • 「キャンバスを」拡大縮小(ズームイン・ズームアウト)しても劣化は発生しない

もしかしたらズームイン・ズームアウトという単語を使っていない以上、オブジェクトの拡大縮小を指すのかもしれない。ただし、ズームイン・ズームアウトと拡大縮小はとても似ている概念である。よって、先入観によって勘違いをしてしまう可能性はゼロではない。比率は不明だが、検索した結果同じような悩みが書き込まれていたことが証明になる。そしてなにより、「Illustratorではズームインしても再計算され綺麗に表示される」という事例があるという背景も関係する。

どんな先入観をもつ人間に対しても、同じことを伝えられる状態というのがもっとも望ましいデザインである。この場合、マニュアルでは「拡大しても」ではなく、「オブジェクトを拡大しても」と書けばさらに誤解のリスクは低下したのかもしれない。副産物的だが、すごく勉強になった事例だった。

…どっちも間違えてないって言ったけど、やっぱ、ズームを拡大って言ってたこちらが悪いかな。いやでも、デザイナー視点から見たら改善したくなるというか。ハハハ